えびふらいのうごかしかた
こんにちは、なんです。
この記事はUnreal Engine 4 Advent Calender 2018その2
の6日目の記事にあたります。
はじめに
UE4には様々な方法でアクターを動かす方法があります。
アーティストであれば、ほぼ必然的にCharacterクラスを利用して自分でモデリングしたキャラクタを動かす方法を試してみるでしょう。ぼくもそうでした。
実際UE4のCharacterクラスはとても便利にできていて、歩行、ジャンプ、飛行、泳ぐなどの移動システムが最初から用意されており、BlenderやMayaなどの3Dツールでキャラをモデリングしてリグを仕込み、アニメーションをつけてFBXに出力…それをUE4で読み込んでアニメーションBPを作成すれば…あとはThirdPersonテンプレなどにあるキャラクタBPの(スケルタル)メッシュを差し替えることで、すぐに自分で作ったキャラを操作しつつ動かし、レベル上でアクションさせることが可能です。
というわけで…とっても便利なCharacterクラスですが、できないことがないわけではありません。それが今回の記事で実現するような挙動です。それでは、ちょっと一工夫してキャラクターに味わい深い動作をしてもらいましょう!というのがこの記事の趣旨となります。
UE4にはTPSやFPS、サイドスクローラーなど、様々な基本的ゲームのテンプレートが用意されています。中でも、ぼくが大好きなのがスクショにあるRolling Templateサンプルです。
Rolling Templateでは球体に対して物理的な「回転トルク」を加えることで文字通り地面を転がりまわったり、ジャンプさせて箱にぶつける、というようなアクションが可能です。
また、Characterクラスそのままだとすぐにはできない「溝に沿った移動」や「壁にぶつかって跳ね返る」などの動きが、実にシンプルなブループリントノードで実現できていることも可能性を感じるポイントになります。(アクタが物理シミュで動く球体なので当然といえば当然ですが)
そこで…エビフライのエビ・ワンさんに、物理ボールの動きをさせたいと思います。
UE4アドベントカレンダー用にちょっとエビフライさんに歩いてもらっています。#b3d pic.twitter.com/YgSVpfaLtN
— なん (結婚した) (@tarava777) December 5, 2018
作戦1:考え方
玉っころをエビフライに置き換えたい…その前にまずエビフライをUE4にインポートする必要がありますが、今回はそこの部分は一気に割愛。
↑UE4にインポートされたエビフライのエビ・ワン
続いて、アイドルポーズ、歩き、走りをブレンドスペース1Dで作成し、スクショのように最もシンプルなアニメーションブループリントを作成しました。今回は動作をさせるところまでなのでこれで十分です。
同様にして、エビフライをメッシュにしたキャラクターBPも作成しておきますが、イベントグラフはあとで作成するのでアニメーションBPだけを設定しておきます。
ちなみにキャラクタークラスは「歩行能力を持っている」ことが特徴で、Pawnの場合は「なんらかの方法で操作・移動が可能である」ことが定義づけになります。
今回のエビフライの場合、Pawnでもなんでも良いのですが、一旦キャラクターで作っておけばアーティストにとって楽に作戦を進めることができるでしょう。
さて重要なのは「転がる玉っころの動きをエビフライになぞらせる」ことです。
しかし…単純に転がる玉っころのメッシュをエビフライに置き換えても…そのままでは転がることができません。なぜなら「玉じゃないから!」ですねw
それでは…玉っころにペアレントしてエビフライを動かしたらどうでしょう…この方法なら親(リンク元)である玉っころの移動・回転に応じてエビフライも動きます…が、やってみれば分かりますが、玉っころと一緒に回転してしまうので相当シュールな状態になります…ちがう…そうじゃない…という感じですね。
そこで、以下のように仕様を考えてみます。
- RollingTemplateにあるPhysicsBallBPの移動をエビフライに反映させたい。
- 玉っころは非表示にしよう
- 玉っころの転がる方向を前方向だとしよう
作戦2:ブループリントのキャスティング
エビフライのキャラクターBPで以下のようにBeginPlayイベントを構成します。
初心者アーティストがUE4のブループリントに触れ始めて、最初に戸惑うのが「アクタとアクタの参照を作ること」だと思います。代表的なのがプレイヤーのキャラクタBPとアニメーションBP間でキャスティングを行い、相互に変数や関数(イベント)を参照できるようにすることですね。
うっかりすると、このキャスティングをひとつのブループリントで何度も何度も行う羽目になります。非常に面倒ですしブループリントも美しくありません。そこで、ゲームの開始(実際にはそのアクタがレベルにスポーンしたとき)と同時に、キャストを一度だけ行い、リファレンスを変数として保持してしまい、後はそのリファレンスを対象にノードを組んでいく、という手法が使えます。
他にもブループリントインターフェースを使うなど、ブループリント間で通信させる仕組みは色々ありますが、アーティストがさっさと作りたいものを作ってプロトタイピングを行うためには、このような方法がありますよ、という例です。
次に、Tickイベントを利用して…
↑のようにボールの速度から前方向を割り出し、さらに位置を更新するためのノードを組みました。Tickは毎フレーム処理(つまり60FPSなら一秒に60回)されるので嫌われますが、PC上でプロトタイピングを行うにはとっても有効です。最終的にゲームとしてリリースするときにはエンジニアさんと相談して別の更新方法を採用するかも知れませんが、まずは「動けばOK!」の精神でイテレーションを前に進めることを考えます。
次にPhysicsBall側でもエビフライをリファレンス…というかアレしてコレする必要がありますね。今回はチュートリアルではないのでサクサク進めます。
PhysicsBall_BpのイベントグラフにBeginPlayを追加して、Ballのワールドトランスフォームを取得してそこにエビフライをスポーンし、そのままリファレンスに入れる、というノードを組みました。リファレンス用に作る変数はSpawnActor~のノードにあるReturn Valueからワイヤーを引き出し「変数に昇格」をすれば簡単に作れます。
作戦3:仕組みはできた…あとは問題点を潰そう
以上の作業でPhysicsBall_BPにリンクして動くエビフライの仕組みができました。
しかし…このままPIE(プレイ・イン・エディタ)で動かすと、あれこれ問題があるのが分かります。
UE4に限らず、ゲームエンジンでは「表示と非表示」それにコリジョン(衝突判定用の特別なボディ)について考慮する必要があります。
上の動画からわかる問題は
という2点の問題があります。
順番に解決しましょう。
↑PhysicsBall BPのBallについては、ブループリントから制御する必要もなく常時非表示にしておきたいので、ブループリントエディタの右ペインにあるRendering項目からHidden in Gameをチェックして隠してしまいましょう。
このHiddenは、たとえばプレイヤーや敵の死亡時などにもよく使います。ブループリントからも簡単に制御できるので初心者の方は覚えておくと役立ちます。
これで玉っころを非表示にできました。
次はコリジョン同士が干渉してびゅんびゅん飛び回ってしまう問題を解消します。
この仕組みでは、実際に動いているのは先ほど非表示にしたPhysicsBallです。ですから床やその他の物体と衝突するのは玉っころのコリジョンだけで良いことになります。
そこで、BP_EbiOneのコリジョンを編集していきます。
まず↑でカプセルコンポーネントのコリジョンをOverlapAllにしました。NoCollisionでも動作しますが、ゲームにするにはエビフライ側でダメージ判定などを行いたくなるのでオーバーラップできるようにしました。
続いて、BeginPlayイベントの最初で、エビフライのメッシュのコリジョンを無効にする処理を入れておきます。
できました!
ついに物理ボールの動きをなぞるエビフライが実現できました。
作戦4:仕上げをしましょう
動画のように、エビフライを動かして操作することはできるようになりましたが、アニメーションがアイドルのままです。そこで、
シンプルな1Dブレンドスペースのブレンド変数であるSpeedをアニメーションBPが受け取れるようにします。これもいろんな方法があります。
というかですねw冒頭でアニメーションBPでSpeedを受け取る仕組みは組んでいましたよね…記事を書いていて今気づきましたww
だがしかし!このノードではエビフライキャラクタの移動速度だけしか受け取れません。実際に必要なのは玉っころの移動速度です。
そこで!
BP_EbiOne側からアニメーションBPの変数にアクセスできるように、ABP_EbiOneもBeginPlayでリファレンスを取得してしまいます。
BeginPlayと同じく、Tickイベントにもシーケンスを挟み、アニメーションBPのSpeed変数を更新できるようにしました。これによって、アニメーションBPで最初に作ったSpeed更新の仕組みは必要がなくなったので削除しておきましょう。
以上でエビフライがPhysicsBallの動作をなぞって操作できるようになりました!
動画ではエビフライのメッシュを3倍に大きくして大エビフライにしてみました。
作戦5:今後の改良点
- エビフライの位置と回転をコントローラの入力操作に紐づければTickを改善できるかな?
- カメラを工夫すればTPS的に操作できるかな?
- 攻撃、ダッシュ、死亡などもあるといいかな?
などというように、ぜひ改良を試みてください。
エビフライがきのこさんを蹴っ飛ばすと発火して類焼するっていう酷いシステム。次は焼けてるきのこさんに触れるとエビフライが火傷するのをやっています。#UE4Study pic.twitter.com/91D6fRF3El
— なん (結婚した) (@tarava777) February 13, 2018
なお、この記事で作成したプロジェクトを公開します。
ぜひ皆さんも遊んでみてください。